Ftarri / Meenna

田中悠美子

Music Performance

DVD
meenna-986dvd
2017年6月25日発売
価格 2,000 円 + 税
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本編

ミュージックパフォーマンス "KIYOH"
収録時間:48分7秒
構成・演出:田中悠美子
音楽監修:一ノ瀬響 田中悠美子
出演:田中悠美子 鈴木ユキオ 一ノ瀬響 大友良英 山本精一
「ミュージックパフォーマンスたゆたうた」(2010年12月17日、東京、アサヒ・アートスクエア) ライヴ編集映像

特典映像

  1. 灰野敬二 (打楽器 / 声) + 田中悠美子 (太棹三味線 / 声) 即興
    2011年9月22日、東京、公園通りクラシックス
    収録時間:10分6秒

  2. 山本精一 (ギター) + 田中悠美子 (太棹三味線) + 鈴木ユキオ (ダンス) 即興
    2010年12月17日、東京、アサヒ・アートスクエア
    収録時間:8分45秒

  3. 田中悠美子 (エレキ大正琴 / Shaminome 2 / 声) 即興
    2015年9月23日、東京、DOMMUNE
    収録時間:11分14秒

  4. 内橋和久 (ギター) + 田中悠美子 (太棹三味線 / 声) 即興
    2016年5月7日、東京、Bar Isshee
    収録時間:19分38秒

  5. 田中悠美子 (エレキ大正琴 / 太棹三味線 / 声) 即興
    2014年2月23日、英国、ロンドン、Cafe OTO
    収録時間:9分3秒

田中悠美子は、伝統音楽の分野はもとより、現代音楽や即興音楽の領域でも活発な活動を続けている義太夫三味線奏者。田中は過去に、ドイツの作曲家 / 演出家、ハイナー・ゲッベルスのミュージック・シアター "Hashirigaki" (2000年初演) に演奏家・コメディエンヌとして出演、さらに、米国のパペティア、バジル・ツイストのオブジェクト・シアター "Dogugaeshi" (2004年初演) の音楽構成・演奏を担当した経歴を持つ。これらの経験を踏まえて田中が2010年12月におこなったのが、マルチディシプリナリーな自作自演シアター作品『ミュージックパフォーマンス たゆたうた』の自主公演だった。本DVDは、その2010年公演『ミュージックパフォーマンス たゆたうた』のライヴ編集映像「ミュージックパフォーマンス 'KIYOH'」を収録。

本作品は、「義太夫節と義太夫三味線を伝統芸能の文脈から切り離し、エレクトロニクス、ダンス、人形劇、映像、照明など様々な分野のクリエーターと協働することで、その物語世界を同時代のマルチメディア・パフォーマンスとして再生させる試み」であり、田中の広範で多様な経歴・体験と高度な演奏・構成能力が生み出した、極めて意欲的な大作。なお、田中のほかに、鈴木ユキオ (ダンス)、大友良英 (エレクトリック・ギター)、山本精一 (エレクトリック・ギター) が一部で出演。また、一ノ瀬響が、音楽監修、エレクトロニック・サウンドを担当。

また、本編「ミュージックパフォーマンス 'KIYOH'」のほかに、特典映像を5本収録:田中悠美子 (エレキ大正琴 / shaminome 2 / 声) ソロ、田中悠美子 (エレキ大正琴 / 三味線 / 声) ソロ、灰野敬二 (打楽器 / 声) + 田中悠美子 (三味線 / 声) デュオ、内橋和久 (ギター) + 田中悠美子 (三味線 / 声) デュオ、山本精一 (ギター) + 田中悠美子 (三味線) + 鈴木ユキオ (ダンス) トリオ。


田中悠美子 ライナー・ノート

このDVDは、2010年にアサヒ・アートスクエアで行った自主公演「ミュージックパフォーマンスたゆたうた」の記録映像を、編集しては中断するという繰り返しの末、ようやくリリースに至ったものだ。インサート映像を撮り直したり、家庭用ビデオカメラで撮り溜めていた映像を持ち出したりと、再編集の作業が度重なり、作業日になるとあれこれ注文をつける私のわがままに辛抱強くお付き合い頂いた黒川貴さんには、大変な労作をおかけした。サウンドに関しては、この作品の音楽監修者、演奏家として重要な役割を担っていただいた一ノ瀬響さんにお願いして、会場録音に新規録音の音源を加え、入念にミックスしていただいた。おふたりのご尽力により、当時のパフォーマンスが、より望ましい形で生まれ変わったといっても過言ではない。

「作品の解釈」といったことについては、このDVDを鑑賞してくださる皆さまに完全にゆだねている。とはいえ、当時の公演リーフレットとプレスリリースから、作品解説らしき文章を以下に抜粋しておく。

『江戸時代に人形浄瑠璃の音楽として生まれ、歌舞伎の音楽、語り物としても発展した義太夫節と義太夫三味線を伝統芸能の文脈から切り離し、エレクトロニクス、ダンス、人形劇、映像、照明など様々な分野のクリエーターと協働することで、その物語世界を同時代のマルチメディア・パフォーマンスとして再生させる試み。能『道成寺』1、文楽『日高川入相花王』2 の表現様式を引用しながら解体、読み換え、再構築し、自ら動き、義太夫三味線を弾き語り、人形を操ることでそれらを求心的に体現・統合する。

日本人が千年以上にわたって語り伝えてきた『安珍清姫』『道成寺』の物語の「理不尽」。「清姫」はただのストーカーであったのだろうか?「清姫」とはいったいどこからやってきた何者だったのか?「清姫」はわれわれに何を伝えようとしたのか?』

三味線演奏家である私が、このようなマルチディシプリナリーな作品をつくることになったきっかけは、ニューヨークのパペティア、バジル・ツイスト (2015年ジーニアス・プライズ受賞) のオブジェクト・シアター "Dogugaeshi" (2004年 JAPAN SOCIETY 初演) の音楽構成・演奏を担当したことに由来する。その後、2006年 ACC (アジアン・カルチュラル・カウンシル) グランティーとして5か月間ニューヨークでさまざまなパフォーミング・アーツを研究し、2008年度文化庁海外研修特別派遣により、バジルのもとで人形劇作成の研修を行った。それらの成果を形にしたものが、当作品である。

さらに、"Dogugaeshi" 実現の発端は、ドイツの国民的作曲家 / 演出家、ハイナー・ゲッベルスのミュージック・シアター "Hashirigaki" (2000年 Théâtre Vidy-Lausanne 初演) に、演奏家・コメディエンヌとして出演した体験に遡る。バジルと私をつなげてくれたJAPAN SOCIETY のディレクター塩谷陽子氏に出会ったのは、"Hashirigaki" のニューヨーク公演だったのだ。ローザンヌにおける "Hashirigaki" の1か月におよぶクリエーションに参加した夢のような体験は、私の人生の何ものにも代えがたい宝物である。ハイナーの音楽的なシアタークリエーションの方法論や、作品の解釈を観客にゆだねる舞台作品のあり方は、拙いながらも、自分の作品に反映されている。

自身への問いとしてつくられたこの作品。その答えはいまだ出ていない。ただ、この作品の中で、あるいは自らの人生の中で、「芸術⇔芸能」「過去⇔未来」「男⇔女」「支配⇔被支配」「アナログ⇔デジタル」「意識⇔無意識」「時間⇔空間」という二項対立のキーワードの間を、ゆらぎ、さまよい、たゆたってきた自分が、「3.11」以降の世界の激変とシンクロしながら、ある種の統合の方向に向かっているような感覚がある。

最後に、本編に付け加えて、自分の茫洋とした芸術活動の中でこれまでもっとも長続きしている「即興演奏」のライブ映像を、特典映像として5本収録した。"shaminome 2" は、tkrworks の山本俊一氏に製作してもらった shaminome のセカンドバージョンだ。三味線も大正琴も shaminome も、いずれも「楽器と遊んでもらって楽しそうだね~」という感じにしかなっていないのが、田中悠美子の真骨頂なのだろうと思う。

1. 能『道成寺』のあらすじ
道成寺で再興した鐘の供養が行われた日、どこからともなく白拍子が現れて供養の舞を舞い、鐘を落としてその中に隠れてしまう。僧たちが祈祷して鐘を引き上げると、中から蛇体に変身した女が現れ、妄執の炎でわが身を焼き、日高川の底に姿を消す。

2. 和歌山県の道成寺に伝わる物語『安珍清姫』のあらすじ
奥州から熊野詣に訪れた若い修行僧・安珍に一目ぼれした真砂庄司の娘・清姫が、安珍のあとを追いかけて日高川にさしかかり、その執念により大蛇の姿となって川を泳ぎ渡り、道成寺の鐘の中に匿われた安珍を恨みの炎によって焼き殺す。文楽『日高川入相花王』は、この物語を脚色したもの。




Last updated: June 29, 2017

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